関東春ロボコン2026の振り返り-大会直前スペシャル
お久しぶりです、kumjin3141です。今回は私がルール担当を務めた関東春ロボコン2026について、大会本番を迎える前のフラットな状態のうちに解説をしていこうと思います。 以降では、「関東春ロボコン」を「春ロボ」と略します。同じ「春ロボコン」の名を冠する大会に「関西春ロボコン」もありますが、そことは一切関係ありません。ご注意ください。
この記事はタイトルが「大会直前スペシャル」となっていますが、おそらく 3/19 の17:30ごろ、大会終了直後に公開されていると思います。 これを読んでも参加者のメリットにはあまりならないと思いますが、念のために大会のすべての試合が終わってから公開をすることにしたいと思います。
ルール概要
まずは春ロボ2026のルールの概要について説明します。
今年のルールでは、ロボットは以下のように動いて「ファンファーレ」達成を目指します。
- ロボットがノーツゾーンにあるボール(「ノーツ」)を回収します。
- 回収した「ノーツ」をメインエリアにある段ボール箱(「スコア」)に入れていきます。
- 「ノーツ」は赤青黄の3色あり、それぞれ対応する色の「スコア」に入れる必要があります。
- それぞれの色のスコアに2コ以上ずつ「ノーツ」を入れると条件達成、合図を出すことで「ファンファーレ」となります。
ここで注意する必要があるのがノーツゾーンに入るためにはロボットが「自動モード」を取る必要があると言うことです。
「自動モード」において、ロボットは人の操作によらず、自律的に動く必要があります。
また、ノーツゾーンのノーツの配置は、相手チームが決めることになっており、位置を決め打ちしてロボットを動かすと言う事はできなくなっています。
相手が回収しづらい位置にノーツを配置する作戦力、ノーツの位置を認識し回収するが問われる競技となっています。
ルール作成までの経緯
今回、「認識」を主軸にすることが確定したのは、去年の関東夏ロボコン(夏ロボ)の時でした。 夏ロボで運営委員と話しているときに、「そろそろ春ロボでも認識をさせたほうがいいんじゃないか」と促され、認識を主軸にすることを確定しました。
この時点ではボールを箱に入れること、そして回収するまでを自動で行うことは決めていました。ボールの配置に関しては今のような台座はなく、ノーツゾーンにボールを転がす運用を想定しました。 その後かつてのサークルの先輩でロボットの研究をしている方たちと相談をした結果、今の形に落ち着きました。
ルールの意図
ルールブックを読んだ参加者の方はよくわかると思いますが、今年のルールは「いかに認識から逃げられないようにするか」ということを目標に、以下を意識していました。
- 認識をしない戦略を潰す/弱くする
- 認識に対する敷居を下げる
- 認識以外のタスクに関する負担を下げる
自動モード/手動モードについて
自動モード手動モードの採用は、今回のコンセプトが1番顕著に現れている部分でしょう。 モード切り替えをするルールはかなり運用が大変だと言うことを聞いていましたが、
- 手動ロボットで認識を強制することはかなり難しく、
- 春ロボコン2024を踏まえると、完全自動ができるチームはかなり限られる
と判断し、今回はモード切り替えを採用することにしました。
5年くらい経って、春ロボで持ち込まれるロボットのレベルが上がってきたら、完全自動前提のルールにしてみてもいいかもしれませんね。
「ノーツ」の配置について
今回のルールでは、「ノーツ」の配置において、位置に関して一次元の自由度を設けました。
似たように相手チームが配置を決めたボールを認識するというルールで、1番近いのは学生ロボコン2024がありますが、こちらではボールの位置は固定されており、色の配置のみ相手チームが決定するという形になっていました。 今回も同様に、ボールの位置は固定し、色の順番だけ相手チームが考えるというルールにすることも考えました。
しかし、ルールで禁止したところで、実際にそのルールは守られるのでしょうか? 個人的には、「ルールを守らせるシステムが構築されていないルールには、存在する意味がない」と考えています。 セッティングタイム中、協議者の動きやコマンド入力を全て監視し、事前入力を行っていないか確認すると言うことは、少なくとも関東春ロボ運営のマンパワーでは不可能です。 このように認識から逃れるための手軽な抜け道があると言う点で、配置の固定は早々から切り捨ていました。
配置を相手チームが自由に決定できる場合、到底回収不可能な置き方をできないよう、厳密にルールを作成する必要があります。今回は、白線を基準とした配置を義務付け、明確なスペーサーを間に挟ませることで達成しました。
「リバースゾーン」について
今年の特殊なゾーンである「リバースゾーン」を設けているのも認識を促すための策です。 簡単に説明すると、「リバースゾーン」とは「ノーツ」にとっての「リトライゾーン」のようなもので、リトライ時に「ノーツ」を再配置する場合に使用されるゾーンです。
元々、リバースゾーンは「『ノーツ』を『ノーツゾーン』内にばらまく」方針の時に用意したゾーンでした。
リトライ時に再配置する際、既存の配置も調整される可能性をなくすために用意しました。
「台座」を用意することで、調整することは難しくなりましたが、以下のような理由でそのまま残すことにしました。決して消すのを忘れていたわけではないです。
- リトライによって別の経路をとる必要があり、安定性の向上を促せる
- 学生ロボコンでは一度負けると優勝するのはかなり難しく、常に 100% の動きを出せるロボットを作ることは非常に重要です
- リバースゾーンがない場合、再配置の際に既存の配置をこっそり調整することもまだ可能ではあるので、より堅牢なルールになる
- 万が一認識の実装が間に合わなかったとしても、単純な自動制御さえできれば、十分な時間があれば「ファンファーレ」達成可能なロボットを用意できる
- 単純な自動制御で「ノーツ」を「台座」から落としに行く→「リバースゾーン」にしっかり位置を調整して再配置→「リバースゾーン」から「ノーツ」を回収する
- 以下を踏まえると、間に合わなかった段階でこの戦略に切り替えられるかは微妙ですがね…
- ルール上、一度のリトライで一個の「ノーツ」しか再配置できない
- 「ノーツ」を「台座」から落とすのも意外と難しい(単純に横から押すだけだと「台座」が滑る可能性が高い)
「スコア」について
「スコア」に関しては、春ロボ史上最大級のオブジェクトとなっています。「スコア」は、高さが800ミリ以上のものを選びました。
800ミリと言うのは、初期制限でロボットが出ることができない高さになっています。これは認識のためと言うよりは、タスクの難易度を上げるための策でした。
今年のルールでは、口の高い箱を用意し、水平方向ではなく、高さ方向に距離を取ることにしました。当初のテーマであった「玉入れ」も、このコンセプトに基づいています。 これは、去年の春ロボコンや夏ロボコンで、投擲したオブジェクトがフィールド外に出てしまうと言う事象が多発したためです。 特に春ロボコンでは高さ400ミリのフェンスを設けていましたが、それでも飛び越えてしまいました。
ビデオ審査を見ている段階では、箱が大きいおかげで、投擲に関して当初の想定以上に有利な理由になっているのではないかなと言うふうに思います。
フィールド全体の設計について
全チームに認識を促すためには、認識の敷居をより下げる必要があります。 特に認識以外の自動制御に関しては、なるべく簡単になるように調整したいところです。 春ロボ24「ひなまつり」の時に東大以外のすべてのチームが自動でのVゴールに失敗している事実を踏まえると、自動制御の難易度を下げる事は必要不可欠だと考えていました。
フィールドに関してはこのような背景があり、全体が点対称になるように調整しています、対称になるようにすることで、赤青両方のコートで同じプログラムでロボットを動かせるようになるためです。 ノーツゾーンの入り口に関してもスタートゾーン側に置くことで、ロボットの移動経路より単純なものにすることができました。 一方でリバースゾーンの入り口をスタートゾーンと反対側に置いているのは、前の節で説明したように、再配置のデメリットを増やすこと、ひいては認識することのインセンティブを増やすためです。
今だから言える!後悔してる判断
今年は認識にフォーカスを終えている以上、それ以外の部分についてはかなり犠牲にしているところがあります。またルール質問やルール改定で後になって「こうしておけばよかったな」と後悔しているところもあります。 ここからは、そのようなところで特に後悔している部分について話していこうと思います。
オブジェクト選定
春ロボ2024でオブジェクトが弾んで外に出てしまうと言う事態が頻発したことを踏まえ、今年はオブジェクト選定にはある程度力を入れるつもりでいました。結果としては、「スコア」が深いことで弾んで外に出る可能性が低くなり、「ノーツ」に関しても大きすぎず小さすぎないちょうどいい大きさなのではないかと思います。しかし、スコアに関しては正直言って大きすぎたと後悔しています。届いた「スコア」を保管するのに難儀したらしく、オブジェクトの発注担当からは少し怒られました。「ノーツ」に関しても、空気を入れるゴム製のボールであると言う都合上、ボールのサイズが空気圧や劣化に対して敏感らしく、サイズの規格設定に頭を悩まされました。養生テープもモノタロウのものを採用しましたが、大会後に使用することを考えると、パイオランの養生テープを採用した方が良かったかもしれませんね。
このような問題もありますが、1番反省すべき点は間違いなくオブジェクトの総費用でしょう。 1コート分のオブジェクトを用意するのに数万円かかり、運営側は金銭面では問題なかったですが、チームによっては手痛い出費になってしまったと思います。 タスク量を考えると、3色を二個、失敗した時の予備を含めて3色を3個ずつ用意したかったのですが、費用面を考えるとこれは多すぎたと反省しています。 「台座」として選んだ養生テープも、セッティング時のスペーサーを含めてかなり費用として嵩むのも厳しかったですね…。一応、スペーサーは3DPで印刷したり、「リバースゾーン」のものを使うなどすれば費用は抑えられますが、それでも高いですね。
「台座」のセッティング方法
「ノーツゾーン」の「台座」のセッティング方法については、かなり右往左往しました。 実は、セッティング方法はルールブック公開時点である程度決まっていたのですが、ルール改訂で当初の想定と異なる部分が発生して、それに合わせて改訂していました。 なるべくロボット設計に影響を及ぼさないように改訂を続けたつもりではいますが、見通しが甘かったですね…。
投擲リスキーすぎる問題
ルールブック 2.5.3 「ボールが『メインエリア』に接地した状態で、ロボットが『ノーツエリア』
や『リバースエリア』に進入してはいけません。」は、今でも正しい判断だったか悩んでいます。
この条項は、前述した「認識を回避する戦略を潰す」ために追加しました。これがないと、「ボールを全て回収した後、「メインエリア」にばらまき、手動で運搬する」作戦ができてしまうのです。
しかし、このルールによって、投擲して外した際のペナルティが非常に大きいことになっています。
1ミスで強制リトライが確定してしまうことも、予備が1個ある効果を薄めてしまっていると解釈できます。
目的のために投擲のリスクを上げるか、投擲の敷居を下げるために認識を回避する戦略を強めるか、どちらが正しいのでしょうね…
まとめ
今回のルールは、「認識を、させる!」という目標のもと、その他諸々を犠牲にして生まれたルールでした。 個人的にはさせたいことをできそうで及第点といったところですが、もう少しよくできた部分もあるなあと未熟さを実感しています。
この記事を読んでいる時点では競技が終了しているでしょうが、どうでしたか?楽しんでもらえたら嬉しいです。それでは!